大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和39年(う)1133号 判決

判決理由〔抄録〕

被害者の過失の点については、所論のように被害者が進行して来た道路がそのような進行が禁止されているいわゆる一方通行の道路であったこと及び被害者が時速約三〇粁で本件交差点に入って来たことは証拠上明らかなところであり、又関係証拠、ことに前記被告人の供述調書によれば被告人の自動車と被害者の車両との本件交差点への進行状況は道路交通法第三五条第二項に該当する場合、すなわち本件交差点は交通整理が行われていない場所であり、かつ両車が同時に本件交差点へ入ろう、とした場合であったと認められるので、所論のように被告人の自動車の進行が優先すべき場合であったというべきであり、この意味において被害者に過失があったことはこれを否定し難いところである。しかしながら、前述のように本件交差点は交通整理が行われておらず、かつ証拠によれば被告人の進行方向からすれば建物及び塀により左右の見とおしのきかない場所であるので、被害者が進行して来た道路が左様な進行が禁止されている一方通行の道路があっても、なおかつ進行して来る人又は車両が絶対にないとは断言できないのであるから、人の生命、身体の安全確保の見地から少くとも徐行をなし(道路交通法第四二条参照)、左方道路のみならず右方道路の交通の安全を確認して進行すべき業務上の注意義務があるものというべきところ被告人はこれを怠り、時速約三五粁(仮りに所論のように時速約二〇粁としても、右の意味における徐行をしたとはいい難い。)で本件交差点へ進入したのであるから、被告人に過失があることは明らかであり、前述のように被害者にも過失がないとはいえないけれどもそのために被告人の過失に消長を来すものではないから、原判決には何ら事実誤認又は法令適用の誤はない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!